5-3.こんな症状にはこの漢方薬:web版

良導絡―自律神経調整法の基礎知識

第5章 体質を変える漢方療法と食事:web版


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5-3.こんな症状にはこの漢方薬

◯5-3-1.女性に向いている漢方薬は?

 では、具体的にはどんな漢方薬を飲めばよいのでしょうか?もちろん、症状や体質にもよるので一概にはいえませんが、女性の場合、生理があることもあって血の不足気味(血虚(けっきょ))の人が多いようです。そういう方には、血を増やす漢方薬が合っています。具体的には当帰(とうき)という生薬が入っている漢方薬である、婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)・四物湯(しもつとう)・十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)・当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などがよいでしょう。当帰(とうき)は血を増やして、月経を調節し、血流をよくして、痛みを和らげる、さらには体を温める作用があるので、婦人の宝ともいわれる生薬です。血を補うことによって、生理不順、生理痛、冷え症、さらには子宮筋腫、子宮内膜症、不妊症にも効果が期待できます。また、皮膚の表面まで血流がよくなることで、お肌のキメが細かくなってきます。ツヤツヤお肌にも向いている漢方薬です。


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◯5-3-2.カゼのひき始めには、まず漢方薬

 カゼはもっともありふれた病気の一つです。誰でも年に何回かはかかるでしょう。でも、いちいち病院に行ってもいられませんよね。

 ところで、カゼを治す薬というのはまだないのです。「エッ!じゃあ、あのコマーシャルで有名な◯◯とか△△は?」とお思いでしょう。もし、ご自宅にそのようなカゼ薬があれば、箱の効能を読んでみてください。ほとんどの場合、「かぜの諸症状の緩和」と書いてあるはずです。事情は病院でもらう処方薬も同じです。カゼの症状を楽にする薬と、場合によっては抗生物質が入っているかもしれません。でも、残念ながらカゼの原因のほとんどはウイルスなので、抗生物質はカゼウイルスには効きません。抗生物質は二次感染を予防しているか、ウイルスが原因のカゼではなかったのです。

 カゼの場合、専門の医学書を見ても、温かく安静にして水分をとれば数日で自然治癒する、と書いてあります。それならば、カゼのひき始めに市販のカゼ薬を飲んだり、病院にかけこむ前に、漢方薬がおすすめです。なぜなら、漢方薬はまさにこの自然治癒力を強めることでカゼを治すからです。

 カゼのひき始めの対応がうまくできれば、カゼで休む回数、日数を大きく減らすことができます。カゼに備えて、ご自宅にカゼの漢方薬をぜひご常備ください。常備するのはカゼのひき始めを目標にするので、シンプルに2つの漢方薬だけでよいでしょう。

 1つは、有名な「葛根湯(かっこんとう)」です。ただし、カゼなら何でも葛根湯だと思われて、「効かなかった」といわれることも多いので、使うポイントを覚えてください。葛根湯の効くカゼは、ずばりゾクゾクと寒気がするカゼです。首すじがこわばったりしているかもしれませんが、汗はかいていません。熱は出始めか、まだ出ていない段階のカゼです。

 さらに、飲み方にもポイントがあります。必ず熱いお湯で飲むこと。粉状ならお湯に溶かしてもかまいません。それをフーフーいいながら飲んでください。というのも、葛根湯の大きな目的は体の冷えを汗をかかせることで追い出すことにあるからです。そのため、冷たい水で飲んでも効きません。飲んだ後じんわりと汗が出てこないと効き目が発揮できないのです。ですから、葛根湯に併せて温かいおかゆやショウガの入ったしょうが湯を一緒にとるとよりよいでしょう。

 もう1つの漢方薬は、「銀翹散(ぎんぎょうさん)(別名、天津感冒片(てんしんかんぼうへん)など)」です。これはちょうど葛根湯(かっこんとう)とは逆の熱っぽいカゼに合います。つまり、寒気はなく、いきなり熱っぽい、喉が痛いなどの症状のときです。この漢方薬は、体の熱を冷まして病毒を退治してくれます。そのため、熱いお湯で飲む必要はありません。ただし、お腹を冷やすことはどちらのカゼにもよくないので、冷たいジュースやアイスなどは控えてください。

 この2つの漢方薬を常備することで、カゼで病院にかかる頻度がぐっと減ることと思います。自分の体は自分で守る、まさにセルフメディケーションに漢方薬を役立ててください。ただし、カゼだと思っていても実は別の細菌の病気だったりすることもあるので、治らないのにいつまでも自己判断に頼るのは禁物です。


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◯5-3-3.更年期には、この漢方薬

 女性は生理の終わる閉経の時期に女性ホルモンが急激に減っていきます。そのため、体のあちこちに不快な症状があらわれてきます。おおよそ50歳をはさんだ前後5年間位のこの時期を更年期といい、さまざまな不快な症状を更年期障害と呼んでいます。また、不定愁訴といういい方もあるくらい、症状の出方は実にさまざまです。代表的なものは、冷えのぼせ、情緒不安定、いらいら、不眠、動悸などです。

 このような症状は検査しても異常が見つからず、年齢のせいにされがちです。女性ホルモン薬や精神安定薬が処方されることもあります。こんなときは、体のバランスの乱れを整えるのが得意な漢方薬の出番です。逍遙散(しょうようさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、冠元顆粒(かんげんかりゅう)などを使うと、不思議と落ち着いてきます。


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◯5-3-4.老化対策、いつまでもイキイキ、ツヤツヤで

 誰しも年齢とともに生理機能は少しずつ落ちていきます。老化です。その変化は徐々に徐々に40代から始まっています。人間ドックや健診の始まるのも40歳から。高血圧、糖尿病、高コレステロールなどがあるといわれ出し、メタボリックシンドローム、生活習慣病が増えてくるのがまさにこの年代から。なにより、お肌の張り、キメの衰えを女性は実感するのではないでしょうか。電車に乗ったら、前に座っている方の顔と手を見比べてください。顔はごまかせても、手はごまかせません。皮膚の老化は手にあらわれてきます。

 ところで、いまの60代、70代の方たちをよく見てください。年齢を聞いてびっくり。大変お若い方や、反対に老けて見える方など、とても個人差が大きいのに気づくと思います。それもこれも、普段の心がけ一つです。いつまでもイキイキ、ツヤツヤを目指すなら、老化対策は40代から始めましょう。

 老化は東洋医学でいえば、腎虚と瘀血です。腎虚とはまさに体のホルモン系の衰え、瘀血は血流不良です。この2つの対策を行うと、頭痛、腰痛、足腰のだるさ、耳鳴り、目の疲れ、不眠などとともに、まずお肌のツヤが戻ってきます。

 漢方薬としては、腎虚には杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)、天王補心丹(てんのうほしんたん)、八仙丸(はっせんがん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、八味地黄丸(はちみじおうがん)を。瘀血(おけつ)には、冠元顆粒(かんげんかりゅう)、血府逐瘀湯(けっぷちくおとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などをふだんから服用しましょう。


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◯5-3-5.胃腸が基本

 日本人は胃腸が弱いといわれています。食事は基本であるとともに、胃腸が弱っていてはせっかくよい食べ物も体に吸収されません。疲れやすい、体がだるい、食欲がない、胃がもたれる、食事がおいしくない、食べても太れないなどは、「脾虚(ひきょ)」の症状です。

 脾虚(ひきょ)に合う漢方薬は、薬用人参(やくようにんじん)を使ったものが多くあります。六君子湯(りっくんしとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、帰脾湯(きひとう)、人参湯(にんじんとう)を。また、ストレスなどがかかって肝(かん)の症状も重なっている場合は、逍遙散(しょうようさん)、開気丸(かいきがん)などがよいでしょう。


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◯5-3-6.こんな症状に、こんな漢方薬

 その他にも、さまざまな症状に漢方薬が効果を期待できます。その一部を簡単に列挙してみます。


 ・目の疲れには、肝の疲れに関係があります。肝を補う杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などを。

 ・ストレスや生理痛などには、気の滞りを改善する逍遙散(しょうようさん)などを。

 ・肩こりや頭痛には、血の滞りや気の滞りを改善する、冠元顆粒(かんげんかりゅう)、逍遙散(しょうようさん)などを。

 ・不眠の方には、心(しん)の疲れが関係します。酸棗仁湯(さんそうにんとう)・帰脾湯(きひとう)などを。

 ・耳鳴り・めまいは、肝や腎に関係します。さらに気や水分、熱がこもった場合は、温胆湯(うんたんとう)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などを。肝や腎が弱った場合は、耳鳴丸(じめいがん)などを。

 ・アトピー性皮膚炎は、肺、腎、脾に関係します。小児や胃腸の弱い方は、脾を補う、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や香砂六君子湯(こうしゃりっくんしとう)などを。アレルギー体質を改善するのには、腎を補う八仙丸(はっせんがん)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)などを。皮膚の症状によって、温清飲(うんせいいん)、消風散(しょうふうさん)などを併せます。

 ・アレルギー性鼻炎、花粉症には、肺、腎を強化します。クシャミ・鼻水などの症状には、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)など、鼻づまりには、鼻淵丸(びえんがん)などを。ふだんは、八仙丸(はっせんがん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や玉屏風散(ぎょくびょうぶさん)などで体質を強化します。

 ・自律神経失調症は肝と腎に関係し、気の滞りが見られます。逍遙散(しょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)などを。

 ・微熱は、元気のない気虚(ききょ)と水分の不足した陰虚(いんきょ)の場合があります。気虚には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)を、陰虚には八仙丸(はっせんがん)、知柏地黄丸(ちばくじおうがん)などを。

・ニキビ、吹き出物は、熱証で、肝とも関係します。熱をとる清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)などと肝を整える加味逍遙散(かみしょうようさん)などを。


 以上、簡単に症状と漢方薬を紹介しましたが、これはあくまでほんの一例です。漢方薬の種類や使える症状はまだまだたくさんあります。さらに、実際に漢方薬を選ぶには、きちんと診断した上で決めていくのはすでに説明した通りです。あくまでも参考にしてください。

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